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東京地方裁判所 平成2年(ワ)3893号 判決 1991年2月07日

原告

藤田忠

被告

山下和彦

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自二九万七九七六円及びこれに対する平成元年一二月二日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自一三〇万二四八〇円及びこれに対する平成元年一二月二日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求の原因

一  原告は、次の自動車(以下「原告車」という。)を所有している。

1  登録番号 大宮三三な八五八二

2  登録年月日 昭和六一年一〇月二〇日

3  車名 トヨタソアラ

二  原告は、運送業を営む被告有限会社ジヤパンサービス(以下「被告会社」という。)に勤務する被告山下和彦(以下「被告山下」という。)が、被告会社の業務で運転する被告会社所有の自動車(足立四四い六〇三四、以下「被告車」という。)により、次の事故(以下「本件事故」という。)に遭遇した。

1  事故年月日 平成元年一二月二日午後一時ころ

2  事故発生場所 東京都渋谷区高樹町付近の首都高速道路上

3  事故状況 被告山下の前方不注視による追突

三  原告は、本件事故により、次の損害を受けた。

1  車両修理代 三四万四五〇四円

2  代車代 二九万七九七六円

3  評価損 六六万円

4  以上損害額合計 一三〇万二四八〇円

四  よつて、原告は、被告山下に対して民法七〇九条にもとづき、被告会社に対して民法七一五条にもとづき、各自一三〇万二四八〇円及びこれに対する本件事故日である平成元年一二月二日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第三請求の原因に対する認否

一  請求の原因一項は認める。

二  同二項は認める。

三  同三項の1は認めるが、被告らにおいて原告車を修理した訴外東京トヨペツト株式会社に全額支払い済みである。同項の2は知らないし、原告車の本件事故による損傷は、修理日数にして四、五日程度のものであり、原告の代車は自動車電話搭載車である。3は否認するが、訴外財団法人日本自動車査定協会の鑑定でも評価損は一万五〇〇〇円にすぎない。

四  同四項は争う。

第四証拠

本件記録中証拠関係目記載のとおりである。

理由

一  請求の原因一項及び二項については当事者間に争いはないから、被告らは、原告に対し、本件事故により原告が被つた損害を賠償すべき責任がある。

二  損害

1  修理代 三四万四五〇四円

当事者間に争いはない。

2  代車代 二九万七九七六円

成立に争いのない甲第一号証の一、二、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故で原告車が破損したため、通勤等に代車を必要とし、本件事故日である平成元年一二月二日から同月六日までの五日間は、訴外日本レンタカー株式会社で電話付きのトヨタクラウンを借り、レンタル料八万八六八〇円(一日当たり一万七七三六円)を支払い、同月七日から同月二一日までの一五日間は、訴外株式会社トヨタレンタリースで原告車と同種のトヨタソアラを借り、レンタル料二〇万九二九六円(一日当たり一万三九五三円)を支払い、代車代合計二九万七九七六円を要したことが認められる。

被告らは、代車が高価に過ぎ、また、使用期間も長すぎる旨主張し、被告会社代表者本人尋問の結果には右被告ら主張に添う部分もあるが、原告本人尋問及被告山下本人尋問の各結果によれば、原告が、電話付きのトヨタクラウンを借りたのは、原告車と同車種のものが無かつたため、右車を使用したもので、その使用期間も五日であり、そのレンタル料も一日当たり一万七七三六円であり、原告車と同車種のトヨタソアラの一万三九五三円と比べて不当に高額とまでは言えず、右代車の使用は、必要性、相当性、合理性を逸脱していないものとするのが相当であり、また、原告は、本件事故日である平成元年一二月二日から原告車が原告に引き渡された同月二一日までの二〇日間は、代車を使用していたものであるが、成立に争いのない甲第五号証、弁論の全趣旨により成立の認められる乙第二号証、被告会社代表者本人尋問の結果によれば、訴外東京トヨペツト株式会社池上サービス工場において原告車の修理を行つたが、同訴外会社の見積もりがなされたのは平成元年一二月六日であり、受付年月日は同月七日、完成年月日は同月一六日で、原告に引き渡されたのが同月二一日であると認められるところ、代車使用期間は、修理作業期間のみに限定すべきものではなく、修理のための引き渡し、引き取り期間、修理工場の選定期間、修理個所、作業内容や程度の調整期間、修理代金の検討期間、被害者の車の利用目的、利用状況等をも考慮に入れて総合的に定めるべきと解するのが相当であり、成立に争いのない甲第五号証によれば、本件事故における原告車の破損は同車後部であり、リヤバンパー分解取付、ボデーロワーバツクパネル取替、リヤフロアパン修理、塗装等が必要であり、そのために要した修理工場選定、修理個所調整、作業期間、引き渡しに要した期間等から右二〇日間は、本件事故と相当因果関係がある損害と認めるのが相当であるから、被告らの右主張は採用しない。

3  評価損 〇円

原告は、評価損として六六万円を主張し、甲第三号証、甲第四号証、甲第六号証の一、原告本人尋問の結果には右原告主張に添う部分もあるが、原告主張の帰するところは車両買い替えを正当とする理由がないときにも買い替えを認めるのと同一の利益を認めることになつて相当でないうえ、成立に争いのない乙第四号証、被告会社代表者本人尋問の結果では、原告車の基本価格一五一万五〇〇〇円、車検残加点四万七〇〇〇円、自賠責残加点三万一〇〇〇円、減点合計九万二〇〇〇円、査定価格は一五〇万一〇〇〇円としているところ、原則として修理によつて原状回復がなされるのであるから、事故歴があるからといつて、原告車に機能的障害が残存し、あるいは外観が損なわれ、あるいは耐用年数が低下して評価損が生じたものとすることはできず、機能障害、耐久力障害等の具体的な障害が原告車に生じたか否かは明らかでなく、単に一般的な査定価額の減額をもつて具体的な障害にもとづく客観的な価値の低下による損害が現実的に発生したものと認めるに足りる証拠はないので、原告の右主張は採用しない。

三  填補 三四万四五〇四円

弁論の全趣旨により成立の認められる乙第三号証の一、二、弁論の全趣旨によれば、被告らは、原告車の修理代三四万四五〇四円を訴外東京トヨペツト株式会社に支払つたことが認められる。

四  よつて、原告は、被告ら各自に対し、二九万七九七六円及びこれに対する本件事故日である平成元年一二月二日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるから、この限度で認容し、その余は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 原田卓)

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